広島高等裁判所松江支部 平成3年(ラ)4号 決定 1991年4月09日
抗告人 加藤久代 外1名
遺言執行者 小山一郎
遺言者 加藤功一
主文
本件抗告を棄却する。
理由
一 本件抗告の趣旨は「原審判を取り消し、本件を鳥取家庭裁判所米子支部に差し戻す。」というのであり、その理由は別紙抗告理由書及び同補充書記載のとおりであるが、論旨は、遺言者の公正証書遺言によって指定された本件遺言執行者に任務懈怠その他解任の正当事由があるのに、本件申立を認めなかった原審判は不当である、というのである。
二 当裁判所の判断
これに対する当裁判所の事実認定、法律判断は以下のとおりである。
1 初めに
本件記録によると、遺言者は不動産業等を目的とする有限会社加藤総本店(以下「申立外会社」という。)を経営していた資産家であったが、入院中の平成2年2月14日本件(公正証書)遺言をした。本件遺言書によると、遺言者の意向として、同人の病状が悪化して財産の管理が困難になったため、二男加藤淳一(以下「淳一」という。)に事業と資産を管理させること、このため同人が国立大学教授としての地位と研究者としての実績を放擲しての帰郷を余儀なくされるため、同人と家族の将来への配慮を第一とすることが記載され、同時に、すべての真意を弁護士である小山一郎(以下「小山」ともいう。)に打ち明けて同人を遺言執行者に指定するとともに全遺産の分割方法を指定して分割を実行すること及び相続人全員の相続分を指定することを委託(以下「本件受託」という。)した。このため、小山は自己の本来的業務としての弁護士としての地位、本件遺言執行者としての地位のほか、本件受託者の地位を併有している。
2 抗告理由第一点(相続財産目録の調整)について
所論は、遺言執行者が相続財産目録の調整をしたのは就任後半年も経過した平成2年10月11日であって、しかも右財産目録には遺産の一部を欠落するなど不十分なものしか作成されていないし、本件抗告時においても遺産全部を公表しない、というのである。
本件記録によると、平成2年3月29日に本件相続が開始したが、小山はその直後本件受託者及び遺言執行者の地位に就任して相続財産目録の調整を開始している。ところで、本件相続開始前から、特に、遺言者の事業の中心であった申立外会社の経営の承継を巡り、遺言者の妻である抗告人久代、長男である同久一側と淳一側に根深い確執があったが(ちなみに、本件相続開始時における同会社の総出資口数800口のうち主たる持分権者は遺言者が306口、抗告人久代が153口、同久一が58口、淳一が70口等である。)、本件相続開始直後からこれが表面化した。しかし、小山は、その当初から本件受託者の義務として本件遺言の趣旨を実現するため、遺産中申立外会社の出資口数306口の全部を淳一に相続取得させ、同人をして同社の経営を承継せしめる方向で分割を実行することを言明しており、一方、抗告人らは本件遺言書の無効を主張して小山の本件受託者、遺言執行者としての地位を否定し、平成2年3月31日には共同相続人に対し内容証明郵便をもって本件受託者兼遺言執行者を除く相続人間での遺産分割協議を申し入れ、次いで同年4月17日遺産分割調停の申立て(鳥取家庭裁判所米子支部平成2年(家イ)××号事件)、同年10月20日遺言無効確認調停の申立て(同裁判所支部同年(家イ)×××号事件)をなしている。小山は、相続開始直後の平成2年4月3日には動産の確認についての抗告人らの立会申入れを拒否したものの、その直後からは一貫して抗告人らに立会を求め、抗告人らが前記遺産分割調停の申立書に添付した遺産目録記載の株券の所在等について問い合わせをしているが、抗告人らは同年6月9日内容証明郵便をもって遺産分割、本件遺言執行者解任事件の解決まで立会を拒絶する旨申入れ、それ以降も基本的に相続財産調査への協力を拒絶したまま今日に至っている(例えば、抗告人らは、遺言者は生前アイコーポレーションの株式5300株を所有していたと主張するのであるが、本件記録によれば、右株式の存在は抗告人久代が原審家庭裁判所調査官の調査に応じた際明らかにされ、同調査官の調査により初めて具体的な数量等が判明したものであり、今後処分の実情等の調査を経なければ現段階では遺産性も判明しない。)。小山は遺言執行者として、その後弁護士照会、その余の相続人等の協力を得て平成2年10月11日に相続財産目録を調整、交付したが、その時点でも相続財産の全部が明確になっておらず、株券の一部については公示催告、除権判決の申立てを行なうなどしている。
思うに、遺言執行者の相続財産目録調整義務は、相続財産の実態を明らかにして遺言執行者の管理処分権の及ぶ財産の範囲を明確にし、遺言執行者の相続財産引渡義務、報告義務等を底礎する重要な職務であるが、一方、右目録を可及的速やかに調整するためには相続人の協力が不可欠であることはいうまでもないところ、右認定事実によると、本件相続財産の調整にあたって相続財産に精通していると考えられる遺言者の妻や長男である抗告人らの協力を得られていないこと、その他既に判明している本件遺産の種類、数量等にかんがみると、相続財産目録の調整が遺言執行者に就任してから半年後になり、仮にその一部に欠落があったとしても、これをもって任務懈怠があるとはとうていいえない。
なお、抗告人らは、右目録に欠落した相続財産は淳一と遺言者が相謀って隠匿し、さらに同執行者において相続財産の全容を明らかにしていない等々と主張するが、本件記録を精査しても右事実を認めるに足る証拠は発見できない。論旨は理由がない。
3 抗告理由第二点(遺産分割の実行)について
所論は、小山は本件相続財産中、申立外会社の持分306口を相続財産の全容が判明していない平成2年4月11日に淳一に相続取得させる旨分割を実行したが、右は抗告人らに対する敵対的態度であり、また、同年12月25日には不動産を淳一と抗告人久代に相続取得させてその旨の所有権移転登記を経由しているが、これは淳一が他に処分して金銭的満足を得るためになされた偏頗な行為である、というのである。
しかし、前記認定事実によると、小山の右行為は遺言執行者としての地位においてなされたものではなく、基本的には本件受託者の地位においてなされたもので、かつそれは法定相続分に基づく相続人間の平等な分割を排除し、事業と遺産の承継者を淳一と定めた遺言者の遺志に合致することは明らかである。むしろ、本件のように遺産分割方法とその実行、相続分の指定を受託した者が速やかにこれを実行することは、相続を契機とする相続人間の法的安定に資するものとして要請されているとさえいえるものである。このことは、本件のように共同相続人の一部が本件遺言の無効を主張して前記調停事件を申立てているとしても、例えば本件遺言の無効が一見して明白である等の特段の事情がない限り当てはまるものであって、前記行為をもって遺言執行者の解任を問題とする余地はない。論旨も理由がない。
4 抗告理由第4点(遺言執行者が平成2年6月まで淳一の代理人であったとの主張)について
所論は、申立外会社の取締役や社員総会の開催を巡る、抗告人らと淳一との紛争・裁判において、小山が淳一の代理人となった行為は、相続人の一方に組みするもので解任を求める正当な事由がある、というのである。
本件記録によると、本件相続開始前の申立外会社の取締役は遺言者(代表者)、抗告人久代の両名に、平成2年1月15日の社員総会決議により選任された淳一、久美子(淳一の妻)、恵美子(遺言者の三男亡三郎の妻)を加えた5名であり、遺言者の死亡後は淳一が代表取締役に選任されているのであるが、申立外会社の社員である抗告人ら外2名は、平成2年4月6日、前記取締役選任決議の不存在等を理由に3名を債務者として職務執行停止仮処分を申請した(鳥取地方裁判所米子支部平成2年(ヨ)第××号事件)。小山は、昭和59年ころから申立外会社の顧問弁護士として同社の法律事務を担ってきた者であり、本件相続開始後も同様の地位にあって同社の法律相続に応ずる立場にあった。ところで、前記職務執行停止仮処分事件は、該会社にとって重要な処分であるから、実務的には会社をも債務者として審理・判断されるのが一般的であるが、右仮処分申請事件では、当初、申立外会社が債務者とされていなかったため(後に申立外会社も債務者として追加されている。)、小山が同社の代理人となる機会がなく、同年5月21日淳一の代理人に選任されたことがあった。また、平成2年6月20日、改めて申立外会社の取締役を選任するため、淳一の代理人として申立外会社を相手方とする社員総会招集許可申請事件(同裁判所支部平成2年(ヒ)第×号事件)を申立てたことがあったが、いずれも間もなく辞任していることが認められる。
思うに、小山が本件相続開始後も申立外会社の顧問弁護士として一般的な法律問題の相談に応じてきたことに毫も問題は存しない。そして、前掲各事件において淳一の代理人としての地位についたのは、もとより遺言執行者の資格においてではなく、弁護士として事件を受任したものであるが、本件の紛争実態と同人が本件受託者兼遺言執行者の地位を併有していることを踏まえるならば、相続人間の誤解を避けるため可及的に回避すべきであったと思料される。しかし同人が間もなく右代理人を辞任していることを考えると、右が直ちに遺言執行者の解任事由になるとも考えられない。
なお、抗告人らは、小山が、遺言者の生存中から淳一と謀って、ないし同人の意を受けて本件遺言書を作成し、あるいは相続開始直前になされた遺言者の淳一、申立外会社に対する財産処分に関わるなど淳一の利益を偏重する行動に終始している等々と主張するが、本件記録を精査しても右のような事実は認められない。
5 以上の次第で、抗告人らの抗告理由はいずれも採用できず、その他記録を検討するも原審判を不当とする理由は見当たらない。
三 よって、本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 角谷三千夫 裁判官 渡邉安一 渡邉了造)
(別紙 抗告申立書)
原審判は、抗告人らの主張する遺言執行者の解任事由につき、それを認めるに足りる証拠はないとして、申立人らの本件申立を却下した。
しかしながら、申立人らは遺言執行者の解任事由はあると考えるので、つぎにその詳細を述べる。
1 財産目録について、遺言執行者がその調整を若干遅滞したにしても本件遺言執行者を責めることはできないと判断されているが、申立人らが財産目録を交付されたのは平成2年10月であり、その目録で亡功一の財産が全部明らかにされたわけでもない。遺言執行者は平成2年6月27日に整理前の財産目録を鳥取家裁米子支部に提出しているが、それと加藤功一財産目録と比較すると火災保険の記載、アイコーポレーションの株式等前者に記載されていながら後者には記載のないものがある。裁判所の調査によると相続開始時にはアイの株が5330株あったものがその後に処分されている事実があり淳一が勝手に処分したのを小山弁護士が淳一と意を通じて隠すためではないかとの疑いがある。
2 遺言執行者は、別訴職務執行停止仮処分事件において、当初淳一らの代理人となったがその後程なくして右代理人を辞任していることが認められるから、これを解任事由とするのは相当でないと判断されている。
これについて、遺言執行者は淳一らの代理人として前記事件だけではなく、社員総会招集認可申請事件(鳥取地裁米子支部平成2年(ヒ)第×号)の代理人もしている。仮処分事件についても平成2年12月3日付準備書面において対立構造になる以前に辞任している旨主張するが、辞任したのは平成2年6月27日である。それまでに債権者久代の審尋も行なわれており、代理人である遺言執行者からも期日変更申請の中で故人の意思に即して加藤淳一氏の代理人に就任する旨記載し明らかに争う意思を表明している。
しかも、辞任届が提出されたのは債務者加藤淳一と十分に打合せを終えたその審尋の直前(前日)である。
さらに、遺言執行者は永年加藤総本店の顧問弁護士であったが平成3年1月まで顧問料月額2万円を受領している。それに反してしかも弁護士倫理にも反して社員総会招集請求事件においては淳一らの代理人として有限会社加藤総本店を相手に訴訟を提起している。これは、顧問契約に反する行為であり、前記期日変更申請の中で有限会社加藤総本店のものごと全般に対して故人より堅々依頼されており、との主張とも矛盾する。遺言執行者は相続開始後、抗告人らと反対の立場として常に淳一らと共に行動をとって来たものである。
平成2年4月16日の淳一を代表取締役に選任する社員総会にも自ら出席をし、又抗告人らの申入れによって同年4月11日東洋ホテルで相続人間で話合いの場がもたれたもののその席にも淳一らの代理人と称して出席し話合いが進められた。
いずれにしても、平成2年6月頃までは遺言執行者というよりは淳一ら代理人として行動しているのである。併せて4月10日頃には加藤総本店の出資口数306口をあわてて淳一に指定したり抗告人らに対して全く反対の態度をとったりするなど、そういった不公平な姿勢からして全く信頼出来ない。遺言無効まで考えている抗告人ら側としては、相続開始後3ヶ月以上もしてからの遺言執行者の立ち会いの呼び掛けにも応じなかったのはその辺にも理由がある。306口の出資口数について、事業活動を維持する上で、訴訟提起する上で支障のあった(実際それも事実かどうか判らない。)旨準備書面で述べているが抗告人久代が取締役として残っており、急いで提出する必要もなかったしそれに前記仮処分事件の決定においても加藤総本店は功一と久代の2人の会社であった旨認められており、訴訟提起するのであれば当然久代の意見も必要とするのにそれも行なっていない。同準備書面では時効にかからないよう訴訟提起した事件名・番号等も全く明らかにしていない。抗告人らを会社から排除するための目的で淳一に306口を指定したり4月16日に淳一を代表取締役に就任させる総会に立ち会ったりしていることと、平成2年5月3日には会議の目的として取締役の選任及び解任、代表取締役選任のために淳一らからの社員総会招集請求がなされていることとは明らかに矛盾するが、それらのアドバイスを小山弁護士がしたということは容易に推察できる。
その後、平成2年6月20日に遺言執行者を代理人として社員総会招集請求事件が提起されていることからして、その社員総会招集請求通知も当時淳一らの代理人をしていた遺言執行者の指示によってなされたものである。
従って、上記代理人を遅滞なく辞任したからといって簡単に済まされる問題ではない。
遺言執行者は、準備書面において、職務執行停止仮処分事件の代理人となった理由について、顧問先である加藤総本店としては重大な事件であり便宜上淳一らの代理人となった旨の主張であるが、その後加藤総本店を相手に社員総会招集請求事件を淳一らの代理人として提起していることは、加藤総本店との顧問契約に反する行為であって理由としてたやすく信用できない。
306口の出資口数の指定の時点で、淳一らの代理人であったことは明らかな事実なのである。
3 社員総会招集請求事件の委任状を見ると、加藤恵美子の実印らしき印の押してある委任状を除き、その他は全て同一人物によって作成されたものと推定できる。御庁に宛て提出されている加藤恵美子の委任状のみ「右抗告取下げの件。」と記載があり、一週間後に取下げがされていることからすると、恵美子の意思なく勝手に即時抗告の申立てをしたものである。本件において利益のあるのは淳一であって、恵美子の実印以外の委任状は全て淳一が偽造したものと考えられる。
4 遺産の内の不動産について、遺言執行者の指定によって平成2年12月25日に淳一と久代に相続登記がされているが、とくに急いで登記をする必要もない。淳一から他に処分して金銭的満足を得るために急がされて登記したと考える。
5 遺言執行者は平成2年1月頃に被相続人から相続問題について相談を受けている。1月の時点で被相続人の遺言は自筆証書遺言であった。
この頃(この後であると思うが)、遺言執行者に対しての手紙がある。これはワープロで淳一によって作成された物である。(淳一審尋調書)。その内容はというと、抗告人らから訴訟が提起されると予想されること、同人らからの委任は受けないで欲しいこと、報酬についても淳一側(私からの分とは淳一のことを指し、淳一の意思が存在する。)についた方が得であること、その報酬について前払したいこと、相続の件で案が出来たらなるべく早く来て欲しいことなどが記載されている。遺言執行者は淳一の代理人をして欲しい旨依頼されているし、公正証書遺言はもとより自筆証書遺言も淳一のみの利益を考えたうえで遺言執行者によってその内容が決定されたものである。
そして、遺言執行者は永年加藤総本店の顧問弁護士をしていたこともあり、相続問題について相談を受けているのであるから被相続人の資産の内容についてはこの時点では知っていたはずである。その後、2月13日には被相続人の資産が同人の債務と相殺ということで加藤総本店に名義移転されている。そして翌日2月14日公正証書遺言が遺言執行者とその法律事務所員の立会いによって作成されている。さらに間もない2月17日には鳥取県○○町○○の不動産17筆の遺産が淳一に所有権移転されている。遺言執行者はこれらの財産について当然知っていたはずであり、その処分行為を容認していたとしか考えられない。
これらのことからして、相続人全員のための公平な立場であるべきなのに、本件遺言執行者は不適格であると言わなければならない。
公正証書遺言記載の相続分の指定並びに分割の実行の委任に関する事柄も自筆証書遺言には記載がなく、遺言執行者が決めたものであって、遺言者の意思によらないもの(淳一の意思に全面的によっているもの)である。
6 被相続人の遺産は平成2年1月頃から淳一が占有し管理しているものであるが、遺言執行者は就任後もその管理を淳一にさせている。このこと自体公平さを欠いている。平成2年4月にアイコーポレーションの株式合計4000株が3回にわけて処分されているが、これは占有者である淳一によってなされたものであり、遺言執行者の容認行為であるか又は全くの重過失である。
7 被相続人は平成元年12月20日頃、○○大医学部付属病院に入院したが、この時既に癌の末期症状であった。平成2年1月11日からはその痛みを止めるためにモルヒネを毎日注射していた。従って、以後の被相続人の意思表示は本人によってなされたものかどうか判らない。
遺言執行者への前記5項の手紙から公正証書遺言作成に至る経緯からして淳一らと遺言執行者によってストーリーが進められていったものである。
8 被相続人の土地の所有権移転及び加藤総本店の役員変更登記は全て山本司法書士が行なっている。そして遺言執行者の委任によって平成3年12月25日淳一と久代へ相続登記がなされているがこれも登記を行なったのは山本司法書士である。遺言執行者、加藤淳一、山本司法書士の三者のつながりも十分問題のあることなのである。山本司法書士は、昭和46年7月の全く不存在の総会議事録を作成した張本人であり、それと意を通じ、各登記手続を委任することなど、小山弁護士や淳一は全く意に介してない、動じない態度なのである。
9 遺言執行者が解任あるいは職務停止とされたとしても本件相続については遺産分割の調停が米子の家裁で行なわれており最終的には解決できるので何ら支障はない。
このままでは遺言執行者と抗告人らの信頼関係はおよそ回復できない。
(別紙 補充書)
1 平成2年10月頃に遺言執行者の作成した財産目録にはあえて記載のない遺産がある。アイコーポレーションの株式(平成2年2月5日頃4000株の株券を淳一に渡した。それを淳一が処分している。)、東西日本の株式(数量不明)、割引国債8口合計金2440万円が平成2年2月の時点ではあったのを抗告人らは確認している。これらは淳一が占有していたものである。また、平成2年2月17日に淳一に所有権移転された鳥取県○○町○○の土地17筆の記載もない。
そのほかにも○○市農協に貯金がある。平成2年2月頃の海山合銀の預金残高と財産目録記載の預金残高とは2000万円以上の差額がある。それはそれとして、遺産全部を今日に至っても公表しないでいることは、それらの占有者である淳一の利益を考えてのことで、淳一と代理人であった遺言執行者との深いつながりが伺える。
2 なお、職務執行停止仮処分事件にて、その調べも終り決定の期日が近づいた平成2年12月末頃、淳一はその事件で敗訴を予想したのか、2度に亘って(社員総会招集請求事件を起こしていながら)社員総会を招集した。
淳一は無駄な争いを拡大させる全く矛盾した行動をとっている。
これに対して抗告人らは総会停止の仮処分決定を得た。裁判所によって一度目の総会停止決定がなされた直後、また総会招集がなされそれに対してもまた停止決定がなされるという経緯があった。
このことは会社の利益を守ると言い張る遺言執行者と協議せずにはなされない行為であり、淳一の執拗さも十分判り、併せて検討して戴きたい。